
離婚とお金のこと
(財産分与)
日本では、夫婦の3組に1組(35年以内に離婚する確率が約28%)が離婚すると言われています。そんな中、「実際に離婚を考えている最中だ」という方は多いかもしれません。
また、現在、離婚をすることは考えていないけれど、将来的には視野に入れたいと考えている方もいらっしゃるでしょう。一方、離婚に踏み切れない理由の上位を占めるものとして、「お金の問題」が挙げられます。
今回は、そんな離婚を考え始めた方々が、気になるお金の話の一つ「財産分与」についてお話しします。
財産分与とは
まず、財産分与とは、婚姻生活中に夫婦で協力して築き上げた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配することをいいます(民法768条)。
民法第768条
- 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
- 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から5年を経過したときは、この限りでない。
- 前項の場合には、家庭裁判所は、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため、当事者双方がその婚姻中に取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。この場合において、婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。
慰謝料と何が違うのか?
慰謝料は、離婚について有責の配偶者に対して損害賠償として請求できるものです。これに対し、財産分与は、夫婦共同で築いた財産の清算という意味を持つものです。つまり、離婚の原因が相手側にないと請求できない慰謝料と違って、結婚中の生活の中で資産の形成に協力していれば、自分に離婚の原因があった場合にも請求することができます
そもそもなぜ財産分与をするのか?
財産分与は、(1)夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配、(2)離婚後の生活保障、(3)離婚の原因を作ったことへの損害賠償の、主に3つの性質があると考えられます。
財産分与の3つの種類
そして、財産分与は、大きく3つの種類に分けることができます。
1. 清算的財産分与
清算的財産分与とは、ある財産が夫婦どちらか一方の名義であったとしても、それぞれの貢献度に応じて財産分与がされるべきというものです。
2. 扶養的財産分与
扶養的財産分与とは、夫婦の一方の経済力が弱く、離婚後に自立して生活することが難しい場合に、その一方に対して支払われる財産分与です。
3. 慰謝料的財産分与
慰謝料的財産分与とは、離婚時に夫婦一方のDVや不倫等で慰謝料が問題として取り上げられている場合、財産分与に慰謝料も含めて支払うことを言います。
どんな財産が財産分与の対象となるのか?
~特有財産は財産分与の対象にならないことに注意!
では、どんな財産が財産分与の対象となるのでしょうか。
離婚するときの財産分与の対象は、婚姻期間に夫婦が協力し合って築き上げた財産になります。
離婚するとなると、夫婦の共同生活は解消しますので、財産についても夫婦で公平に分けたうえで、離婚後はそれぞれが自分の財産を管理することになります。
夫婦が離婚前に別居していた場合は、別居した時点の財産が財産分与の対象となります。
財産分与の対象となる財産は夫婦の実質的な共有財産になりますので、形式上の名義が夫婦のどちら側になっているかは問題となりません。財産分与の対象となる具体的な財産としては、財産分与の対象財産としては、一般には預貯金、保険、不動産などがあります。
以下、具体的にその中身を見ていきましょう。
預貯金
結婚期間中に蓄えた預貯金は財産分与の対象となります。夫婦のどちらの名義になっていても、結婚期間中の収入によるものであれば基本的に財産分与の対象財産です。
保険
結婚期間中に子供のための学資保険や終身保険などに加入した場合、解約返戻金のある保険であれば財産分与の対象となります。ただし、保険料が一括払いで夫婦の片方の婚前の預金や夫婦の片方の親からの資金提供などによって支払った場合には、共有財産とはならず財産分与の対象とはなりません。
不動産
結婚期間中に購入した不動産も、財産分与の対象となります。ただし、不動産を購入した資金が、一方が婚前に貯めた貯金であったり、夫婦の片方の親からの資金提供などによる場合には、財産分与の対象にならなかったり、分与割合が調整されることがあります。
退職金
また、夫婦の一方又は双方の退職金も、遠くない将来に確実に支払われることが見込まれる場合は、財産分与の対象になる場合もありますので注意が必要です。
一方、夫婦が所有している財産でも、財産分与の対象にならない財産もあります。そのような財産を「特有財産」といいます。たとえば、夫婦のどちらかが、婚姻する前から有している財産は特有財産になります。また、婚姻後に増加した財産でも、親などからの贈与や相続により有することとなった財産も特有財産といえます。このような特有財産は、夫婦が共同して形成した財産ではありません。ですから、離婚における財産分与の対象にはなりません。
財産分与はいつ行うのか
~財産分与の基準となる時期
財産分与をする際には、どの時点を基準に財産を分けることになるのでしょうか。
財産分与の基準となる日は、夫婦が別居もしくは離婚を申し立てた時点です。つまり、夫婦が別居した日や離婚を申し立てた日が、財産分与の基準となります。
財産分与はどうやって行うのか
~財産分与の具体的な方法
財産分与の具体的な方法や分与される財産の範囲は、夫婦の合意や裁判所の判断によることになります。
不倫は財産分与に影響する?
結論から言うと、不倫(不貞行為)の事実自体が、直接的に財産分与の割合(原則2分の1)を変えることはありません。しかし、不倫は「慰謝料」の請求原因となるため、これを財産分与と合わせて精算することで、最終的に受け取れる財産の額に大きな影響を与えます。
例えば、夫婦の共有財産が1,000万円とすると、財産分与で夫と妻で500万円ずつ分けます。不倫をされた妻が、不倫をした夫に200万円を請求したとすると、妻は夫から財産分与として500万円もらい、夫は妻に慰謝料として200万円を支払います。
これを相殺すると「妻は夫から合計で700万円を受け取る(夫が受け取るのは300万円)」という計算になります。
また離婚の話し合いの中で、不倫をした側が謝罪の意を示すなどの理由で、「自分の取り分は3割でいい」「財産分与は放棄する」といったように、2分の1以外の割合に合意することもあります。これはあくまで当事者間の合意によるもので、裁判になった場合にこのような判決が出るわけではありません。
探偵的には、不倫したなら財産は放棄しろよって思いますが・・・
さいごに
最後に離婚成立後、5年間は財産分与の請求権が残ります。ですので、離婚時に夫婦で確認をしておかないと、離婚した後に相手から請求される可能性を残します。
そのような請求をされないためにも、財産分与について夫婦で確認をしたときは、離婚協議書、公正証書などを作成しておくと安心です。



